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第1回のあらすじ
整形外科の研究のため、オーストラリアに留学することになった先生。奥さんと息子2人の一家4人で南部の都市、アデレードにやってきた。ひょんなことから、学会で出張する大学教授夫妻の自宅に2週間住むことになった。
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「マズ、コレデ 、コウトッテ、 コレニイレテネ・・・」
ちょっと来て、と言われ、奥さん出て行くと、裏庭に満面の笑みをたたえた教授が両手に小型シャベルとビニール袋を持って立っていた。で、始まったのは、犬のうんちの取り方。以後2週間、教授夫妻が帰るまで、奥さん、山盛りのうんちをとっては水で草を洗う毎日になった。うんざりである。
電気製品とセキュリティロックの使い方、
娘たちの電話番号・・・客室食堂のテーブル1杯に拡げられた論文の資料だけはさわるな、とそれだけ言って出かけようとする。奥さん、あわてて、「これだけは、絶対使うな、開けるなという物はあるか」と必死に尋ねると、「ナイヨ」と一言。『ソンナモノガ、アルノカイ?
』という顔である。車も家も自由に使え、とは大助かり、国も広いが、心も広い。
何とかお土産を渡し、にっこりお見送りの後、奥さん、ならばと家の探検だ。まずは冷蔵庫、ジャムとジュースと調味料だけ。ご夫妻とも研究者だからか、シンプルな家具に食器。グラスはパーティ用なのか、やたら数が多い。これなら割っても平気か、と開けては閉め、開けては閉め。やってきたご夫妻の部屋。教授夫人が「私の服を出して、あなたのを入れていいよ」
と言ってくれ

たクローゼットを開けてみると、いいにおい。何だか罪人にでもなった気がして奥さん、探検を止めた。出せるわけがない。果たして自分たちにこんなことが言えるだろうかと、先生と奥さん、しばしソファー
に座り込む。

裏庭に続く居間はガラス張りで、外がよく見える。家の両側は高い塀、裏庭と芝生の部分は、低い木にびっしり青葉がからまって、緑の壁になっている。隣家からは中が見えないし、中から外も見えない。リラックス空間である。
2才のケイイチは「チッ卜」( シット = おすわり) 「ハウチュ」(ハウス=小屋に入れ)「チュテイ」(ステイ= 止まれ)
と、教授に習った初めての英語で、自分の3倍はある犬を従わせている。怖がっていない。兄のソウイチは丸太小屋の上。うちの先生、休むまもなく明朝から仕事。南オーストラリアで最大の救急病院の医師として、大学を出て1、2年のインターン数名をかかえて働くのだ。全て英語。最大級の不安で機嫌が悪い。こういう時は近寄らぬに限る。
翌朝7時半、先生初出勤。どんな顔で帰ってくるのだろうか。奥さん、2匹の犬と2人の子供にえさをやって、掃除、洗濯、歩いて買い物、生活はそのまま。でも英語。10個で200円のりんご、1本100円のパン、1`80円のじゃがいも、1個80円のパイ。得した気分で午後のお茶。
と、犬が見えない。子供に聞いてもだめ。家の周りにもいない。低い戸も閉まっている。通りに出る。
「サニー !」・・・「トイブンー !」・・・。
静まり返る。奥さん青くなる。どうしよう、犬が家出した。
=写真はアデレード市内
(大田整形外科クリニック by高江)