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時は2月。真冬から真夏へとすっ飛んできた一家を迎えたのは、中年のフランス人のおばさんイヴォンヌ。 大学教授の秘書だ。小型バギーに2歳児。ゲームボーイを抱えた5歳の男の子。準備と長旅に疲れた奥さん。山のような荷物と先生。
「イヴォンヌデス、オマチシテマシタ」 ( コンナニナニヲハコンデキタノ ? と言いたそう) 。ダンボールの中は、炊飯器にお鍋にお玉、味噌、醤油・・・。まさに難民のようである。
オーストラリア第4の都市アデレード。ここ、ロイヤルアデレード病院と大学に我が家の先生が留学することになった。優しいイヴォンヌは車の中で話しかけてくれる。先生は荷物と別のタクシーの中。どうしよう、彼女の英語が半分くらいしか分からない。決して早口ではないのに。奥さんはすっかり落ち込んで、大学の宿舎に着いた。
「ナイス、トゥシーユウ、アゲイン」
日本で一度お会いしていた教授と奥さん、再会の抱擁。彼のぶくぶくとした大きなお腹がくっついて、ぴったりとほおをつけ合う。軽くチユツ。奥さん、すっかり機嫌を取り直す。自分で何を言ったか憶えていない。この抱擁を「ハグ」という。
英語なんぞ分からなくても「ノオ、プロブレム」大丈夫。
車に乗る全員がシートベルトをする、と法で定められている国。説明を受けながら、教授の車で自宅に伺うことになった。町の中心に近い住宅街。あまり、人影はなく街路樹が高い。濃淡のあるベージュの石造り風の家に着いた。3つの寝室、応接間、来客用食堂、台所、居間。総芝生の裏庭は家の敷地近くあり、子供たちより大きな犬が2匹。奥には、はしごで昇る子供の遊び場、ケイビイハウスといわれる丸太小屋が建っている。なんとも羨ましい。
その庭で教授のご家族と秘書さんと、歓迎の夕食会。皆、英語しか話さない。うちの先生、自分の事、研究の事、用意してきたかのようにしゃべっている。すると、普通の速さで英語が飛び交い始めた。待ってくれぇ・・・。待ってくれない。笑ってごまかすしかない。いちいち質問してたら食べられない。ここは先生に任せて、奥さんと子供たちは、黙ってお肉をいただくことにしよう。ナイフとフォークでひたすらカチャカチャ。と、耳に入ってきた言葉。
「2週間ほど、この家に住めって ! 」
一家は教授ご夫妻が学会でアメリカに行っている問、留守番を兼ねて住むことになった。
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